聖職者と猫

猫の迷い-後編-

あれから数日、二人はすっかり元の通りに接していた。
丸テーブルを一緒に使って過ごす夜のくつろぎのひと時に、ユーベルはアルのことをもっと知ろうと問いかけていた。

「猫さんはお酒は飲まないの?」

「あー、一回飲み過ぎてやらかしたから、そっから飲んでない」

「やらかしたって?」

「……」

「え、何?」

普通の会話だと思っていたユーベルが首を傾げると、アルは言いにくそうに空笑いをして目を逸らした。

「はっはっは、女性関係でちょっとな」

「あ……あー…、そう…」

それだけで、性関係だなと察せるほど、アルの目は泳いでいた。
あまり深く掘り下げないでおこう、とアルが淹れた珈琲に口を付けるユーベルに、今度はアルから質問が飛んだ。

「そういやお前はさ、女の裸とかってどう感じるの?」

「ゴフッ」

気管に液体が入り込む音がした。
次いで、ユーベルが派手に咳き込む。

「ゲホッゲホッ! …み、水ッ…ゴホッ」

「うわっ、大丈夫かお前!」

慌てたアルがコップの水を急いで渡す。
それを飲んだユーベルがひとしきり咳き込んで、涙目になった目を冷ますように手で仰ぐ。

「げほっ…急に何言ってんの。死ぬかと思った」

「あ、あぁ、悪い…そんなに驚くとは思わなくて」

ユーベルの背中をさすりながら、呼吸が落ち着くのを待って、アルはもう一度尋ねた。

「…で、どうなの?」

その目は好奇心でうずうずと輝いていて、ユーベルを心底呆れさせる。

「…そんなの聞いてどうするの」

「えー、単なる好奇心」

「…べつに、普通だよ」

ユーベルの声のトーンが低く抑えられていて、踏み込まないで欲しいと遠回しに滲ませる。
しかしそんなことなど全く気にせず話を続けるアルは、悪い意味で鈍感だった。

「普通ってどっちの? ふつーに興奮するのか、それとも、特に何も感じません、普通です、なのか。どっち?」

「えぇー、どっちでもいいでしょう。ていうか何なの、なんでそんなに掘り下げて来るかなぁ」

「お前のことは何でも知りたいお年頃なーの」

はぁーと、ユーベルがこれみよがしに長く溜め息をつく。

「デリカシーってものは無いの」

「男同士、腹割って話そうぜ」

明るく笑って背中を叩くアルにそんな繊細なものは無さそうだった。
ただただ己の好奇心のために突っかかってきて、非常に鬱陶しい。
二度言う、非常に鬱陶しい。

「…すごく鬱陶しいんですけど」

「なんだよ、言わないなら実力行使するぞ」

「? どういう意味?」

離れて行ったアルが、寝床にしているソファーの隙間に手を突っ込んだ。
そんなところに隙間があった?と、まずそこに驚くユーベルの元に、楽しそうに尻尾を揺らしたアルが帰ってくる。
その手にエロ本を携えて。