猫の迷い-後編-

「!? おおおいちょっと! 人の部屋に何隠してんの!?」

「この際それは置いとこうぜ」

「置いとけるか! 誰かに見られたら私のだと思われる…!」

「あー堅い堅い。こんなとこで生活してっからか? こんなの男の部屋ならあって当然だって。神父の部屋にもあるぞ」

「うわっ…聞きたくなかった…」

軽くショックを受けたユーベルがテーブルに肘をついて頭を凭れる。
するとその視界に、見開かれたエロ本がすいっと侵入してきた。
一面に艶かしい女性の姿があって、恥じらいの眼差しがユーベルとかち合う。

「……何してんの」

「ほー、何とも思わないのか」

下から覗き込んで観察してくるアルを睨み付けても、彼には効果はないようだった。
むしろ反応を楽しんでいるようで、ニヤニヤとほくそ笑む様子が憎たらしい。

「何とも思わないわけじゃないよ」

「へー、じゃあ興奮すんの?」

「まぁ…」

改めて聞かれると、ユーベルは口篭った。
なんだってこんなデリケートな部分に触れてくるんだと、また溜め息をつきかけたところで、アルの手が別のデリケートな部分に触れてきて、ユーベルの膝がガタンと跳ねた。

「!?」

「あぁ、まったくもって反応ゼロだな」

「ちょ、ちょっと! えっ!? もう何なの! 人の性癖がそんなに面白いの!? すみませんね反応出来なくて!」

追い詰められたユーベルが勢いよく立ち上がって、バンと本を閉じる。
急なことでびっくりしたアルが目を丸くして、その尻尾までもが毛バタキのように膨らむ。

「あ……。…ごめん、大声出して」

我に返ったユーベルが、ゆるゆると腰を下ろす。
だから黙っていたのに、と額を押さえると、それから開き直ったように静かに笑って、呆気に取られているアルを見た。

「ふふ…おかしいでしょう?」

「あ…あぁ、いや…」

「いいよ、下手にフォローしなくて」

一度閉じた本を涼しい顔でパラパラと捲ったユーベルは、選びだした見開きのページをアルに見せつけた。

「こういうの、好き?」

「ん…まぁ」

開かれたページの女性と目が合って、動揺したアルの尻尾が揺れる。
ふぅん、と相槌を打ったユーベルが、今度は少し過激なページを選んでアルに見せる。

「これは?」

ギリギリのところまで衣服を破かれた女性が、悔しそうな目で睨み付けてくるこのページは、アルのお気に入りだった。
視線が釘付けになって、緊張で喉を鳴らす。