貴婦人の集い
フランの情報の通り、アルは裏庭に居た。
この時間帯で一番日当たりのいいベンチに寝転がって、日向ぼっこを楽しんでいるようだった。
前回が近寄り難いクリスだったこともあって、友達と話すような感覚でリラックスして話し掛けられた。
「こんにちは、アルベール様」
「んー? おう、こんにちは」
組んだ手を枕にして目を閉じていた彼が、ちらっと私を見る。
「お前も日向ぼっこか?」
「え? いえ、アルベール様に用があって、来ました」
「俺にぃ?」
「はい。今度、司祭の試験を受けるので、お祈りをして頂きたくて」
私がそう言うと、アルは再び目を閉じてへらへらと笑った。
「ははっ、なんだ。だったらユーベルかクリスに言えよ。その方がご利益もあるぞ」
「た、確かに…って、それじゃ駄目なんです。私はアルベール様にお祈りして頂きたいんです」
「お前、しれっと失礼だな…俺は面倒なことはやらないんだよ」
思わず肯定してしまった私を一瞥したアルがその場で昼寝を決め込もうとする。
これは多少強引に動かさないと、最後のミッションをこなすのは難しそうだった。
「お願いします、してくれなきゃ困るんです! 助けると思って、お願いします!」
食い下がって、失礼とは思いつつも、留め具が全開の襟元を引っ張った。
すると鬱陶しそうに手が握られて、アルが起き上がる。
「あーもう、わかったわかった! なんだよお前、物好きだな。あれか、猫マニアか」
「あう…そ、そうです! 無類の猫好きなんです!」
せっかく乗り気になったところに水を差すのを恐れて、咄嗟に嘘をついてしまった。
それが功を奏したのか、仕方ねーなとアルが頭をポンと撫でた。
「ここ座って、お祈りのポーズとって」
「はい」
アルと入れ替わりに、ベンチに腰掛ける。
手を組んで目を閉じると、意外にもちゃんとした口上が頭の上を流れた。
それから額に手が添えられて、同じ場所に唇が落とされる。
アルの唇は、おでこにしっかりと触れた。
うん、温かい。
「ほれ終わったぞ」
「はい。ありがとうございます」
「んじゃ俺は寝るから、そこどいて」
しっしっと手で払われて慌てて腰を上げると、アルはまたベンチにごろりと転がった。
本当に猫みたいな人だなぁ、と頭の上で立っている三角の耳を見ながら思う。
「では、失礼します」
「おー、頑張れよー」
私がお辞儀をしても、アルは目を閉じたまま手を振るだけだった。
なんだか最後まで気怠げな人だ。
こうして無事に三人からお祈りをして貰った私は、マリーとフランの喜ぶ顔を想像しながら二人のもとへ急ぐのだった。