違和感

「ふぅ、ご馳走さまでした。お礼にこれを差し上げます」

そう言って両手をポケットに突っ込む。
ごそごそと探って出てきた片方の手に、小包のチョコレートがいくつか乗っていた。

「わぁ…! もらっていいの?」

「うん。その代わり、もう行かなきゃ。みんなで仲良く食べてね」

「うん! ありがとうユーベルさま!」

「あはは、またね」

子供たちと手を振り合って、クリスに視線が送られた。
気が付いたクリスも、ユーベルに合わせてそっとその場を離れる。

「…お疲れ様です」

「ふふ、半分は楽しいからいいんだけどね」

「もう半分は?」

「ちょっと大変かな」

「流石のユーベル様でも、そうですか」

「何その言い方、なんかトゲがある気がするんだけど…」

ユーベルが怪訝な視線をクリスに送ると、クリスからも同じ視線が返ってくる。

「子供相手とはいえ、泥水を飲むなんて思いませんでした」

「えっ…」

クリスの視線に落胆の色が追加される。
しかしそれを物ともせず、ユーベルは笑った。
何故ならクリスが子供たちと同じように、まんまと騙されていたからだった。

「あははっ、飲んでないよ。フリをしただけ」

そう言って、ポケットに突っ込んだままのもう片方の手を出すと、泥水が染み込んだハンカチが袖口から出てきた。
内側に隠していたせいで、ユーベルの袖もまた汚れている。

「えぇ…たかが子供相手に、そこまでしますか?」

「ふふ、喜んでくれるからね。汚れたら洗えばいいし」

クリスは思った。
見上げた根性だが、おかげで子供からのハードルが上がっている…と。

「…今度から、用意しておきます」

「あはは、気付かれたら最後だからね。無理はしないでね」

話をしながら二人が聖堂の中に戻ると、ちょうど、ひなたぼっこに出ようとしていたアルと鉢合わせた。