猫の迷い-後編-

「男は?」

「っ…ん?」

「男相手はあるのか?」

何かを考え込んで逸らされた横目を見つめながら、アルは滑らかな手触りのセーターをするりとたくし上げた。
露になった胸元は日の光を知らず、その白さは純潔を表しているようで、神聖を汚す背徳行為は甘美であるとアルを誘う。
日頃のたおやかな印象とは違って、意外と筋肉の乗っている素肌に舌を這わせると、ユーベルの身体はピクンと跳ねた。

「んぁ…っ、な、内緒…」

「じゃあ、女は?」

慎ましく色づく乳首に舌を押し付けてくにくにと押し込むと、一声上げたユーベルは口元に手を押し当ててビクビクと肩を震わせた。

「あ、っ…んぅ! なっい…しょ、…」

「えー、教えろよ」

時折くっと歯を立てながらころころと舌先で責め続けると、もじもじと背を反らせていたユーベルは赤い顔で悔しそうに眉を寄せて、ついに言い淀んでいた口を開いた。

「んんっ…! んっ! くぅ…っ、しつこ…っいぁ…! わかった、はぁ、…どっちか、答えるから…!」

「んー、じゃあ、男」

虐める楽しさを覚えた猫の目が笑う。
快楽に翻弄される悔しげな目が細められる。

「…っ、ない…っ。なんで今…」

呟かれた答えに満足したアルは、へへっと無邪気に笑って頭からシャツを脱ぎ捨てた。
ズボンも下着もポイポイと躊躇なく放り投げると、ユーベルのズボンを下着ごと引っ張って、少し強引に剥ぎ取って、ずり上がったセーターだけを残した彼の片足を掴んで自分の肩に掛けさせた。

「今だからだろ。俺も男相手は初めてだし」

「…あぁ、じゃあ」

羞恥心をひた隠しにして薄ら笑いを浮かべたユーベルは、アルの首を捕まえて引き寄せた。
興味深そうに傾けられている頭上の耳に向かって、わざとらしく「優しくしてね」と囁く。

「…余裕だろ、お前」

「ふふ、どうかな」

表面上は冷静でいるユーベルに、軽く口付ける。
本当に冷静なのか、取り繕うのがうまいのか、真意がどちらか読み切れないまま、アルはベッド横のエンドテーブルから小瓶を取った。
パチン、と蓋を開いて、粘度の高い液体をとろりと指に絡ませて、不敵な笑みで待つユーベルの入口へつぅ、と指を滑らせる。

「っ…」

顔を背けたユーベルの髪の隙間から、赤く染まった耳が覗く。

「…見栄っ張り」