聖職者と猫

好み

さてさて、寒い時期は日の昇りが遅い。
まだ薄暗い時分に、大聖堂の面々が食堂に集っていく。
壁に彫られた女神と、高い天井にまで続く翼を持つ使徒の彫像。
一定間隔で並ぶ背の高いガラス窓。
大きな暖炉はパチパチと爆ぜる音と暖かさを皆に届けている。
けっこうな人数が一堂に会して席につき、祈りを捧げ食事をする様子は、不慣れな者からすれば圧巻の光景だろう。

よく私語厳禁だと思われがちだが、過度な大声でなければ言葉を交わすことは自由だった。
あちこちで談笑が行われ、和やかな朝のひと時が過ぎていく。
列をなす長テーブルを眺められる位置にお偉方の席があって、司教の三人もそこに名を連ねていた。
ひと足先に食事を終えたアルが、コップの水を飲んだあとに、手の中のそれをじっと見る。

「そういやお前ら、好きな飲み物ってある?」

お前ら、と呼び掛けられたユーベルとクリスが食事をしながらそれぞれ考えて、パンを片頬に寄せたユーベルが先に答えた。

「んー、選んでいいなら紅茶かな」

次いで、ベーコンを端に避けてサラダばかりを口に運ぶクリスが頷いた。

「僕もです」

「猫さんは?」

「あー、好きなのは珈琲だけど、鼻が利かなくなるんだよな」

「へぇ、そんなこともあるんですね」

アルの答えにクリスが返す。
顔を合わせれば口喧嘩しているように見えるが、常識的な交流もあるにはあるのだ。
何気ない会話を交わしていると、ふと横に居た神父が割り込んできた。

「御三方、酒は口にしないのですか?」

およそ神父の発言に似つかわしくない内容だが、それとは別の意味でユーベルが笑った。

「神父様、我々は未成年です」

「あぁ…そうでしたね、失念してました。特にユーベルは、私にとっては先輩でもありますから」

ユーベルがここへ配属されてから神父の代替わりがあったので、大聖堂の中ではユーベルの方が古株なのだ。

「あはは。クリスなんかまだ十六ですよ。見た目でいえば、一番落ち着きがありますけど」

「それは、褒められてるんですよね…?」

三人が口々に話していると、アルが不意に手を挙げた。

「ちょっと待て、俺三十過ぎてるけど」

「……はぁあっ!?」

あまりの衝撃で、大声を上げて席を立ったのはユーベルだった。